茶の湯文化のバイリンガルナビゲーター 保科眞智子の活動ブログ Blog of a Japanese Urasenke tea master, Machiko Soshin Hoshina, based in Tokyo, Japan.

by MACHIKO SOSHIN HOSHINA

カテゴリ:茶の湯つれづれ( 26 )


平和な日本に生まれ育ち、それを当たり前に享受してきた私たちが次の世代になにを引き継ぐのか。毎年この時期になると思いを馳せずにはいられません。


70年代生まれ、戦争を知らない世代の私たちにとって、ウィーン近郊の古城で目の当たりにしたこの光景は、あまりにも衝撃的でした。


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ここに並んでいる陶片はすべて、第二次大戦末期に戦争により破壊されてしまったものです。その数およそ1万点以上。中には日本の重要文化財級の名品も含まれています。






城主との出逢いは都内で催した小さな茶会でした。戦国時代に心の安寧をめざし確立された茶の湯が、このようなご縁を結んでくれたのも不思議なことです。


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300年前に日本から西洋へ渡り、お城を美しく飾った古伊万里と呼ばれるこれらのやきものは、先の大戦後74年間、痛ましい姿のまま中欧辺境の小さな古城で城主一家により大切に保管されてきました。負の歴史をこのように扱うことは、とても勇気ある行動だったと思います。







ロースドルフ城の古伊万里陶片という戦争遺産に対して、やきものの故郷である日本から手を差し伸べられないかと考え、私は有志たちとプロジェクトを立ち上げました。www.roip.jp






私はふだん、茶の湯を英語で海外の方にお伝えする活動をしています。人間は自然の中で生かされ、洋の東西を問わず、生活の中に自然を美しく取り込み豊かに味うアートを創造してきました。それは茶の湯であり、西洋の絵画であり、やきものでもありました。器物は平和を愛する人たちにより蒐集され、人々の出逢いやつながりを穏やかに見守ってきました。




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しかし、それらは戦争で【憎しみ】の対象にもなったのです。ロースドルフ城を接収した旧ソビエト軍は、撤退時に地下の倉庫に隠されていた美しいやきものを、ピストルの的にして粉々に破壊しました。打ち砕かれた陶片はおよそ1万点以上にのぼります。





ヨーロッパの王侯貴族の邸宅を美しく飾った古伊万里のロマンと悲劇の物語。陶片の海は迫真に訴えるものがあります。戦争はいけない、二度としてはいけないと言葉で唱え、頭で理解するのとはまったく別次元の体験です。







古伊万里再生プロジェクトは、現在、駐日オーストリア大使館、在ウィーン日本大使館の後援を得て、現地にて学術調査を進めています。昨年来プロジェクトはメディアにも取り上げられ、少しずつ賛同下さる個人や団体も増えてきました。私自身は民間のボランティアなので、各方面からのご賛同は本当にとても嬉しくありがたいことです。






2020秋には、国内の多くの方にもご覧いただける機会として、東京・大倉集古館にてロースドルフ城のやきものコレクション展が企画されています。また、全国の複数会場にて巡回展も計画されています。日本を代表する研究者・専門家の方々が、高い志を持って取り組んで下さっていますので、是非ともご期待ください。






ロースドルフ城古伊万里再生プロジェクトでは、日本のやきものが世界に展開した歴史、西洋のデザインやアートにもたらしたジャポニスムというインパクトなど芸術的な側面に加え、世界を巻き込んだ戦争がもたらした哀しい出来事に光を当てることで、平和への願いをつなぐきっかけにしたいと希望しています。





陶片がつなぐ平和への願い。これからもチーム一丸となって意義ある活動を展開してまいりますので、ご支援をどうぞ宜しくお願いいたします。www.roip.jp





令和元年 八月十五日 

終戦記念日によせて


古伊万里再生プロジェクト(ROIP)

代表 保科眞智子


by hoshinamachiko | 2019-08-15 18:04 | 茶の湯つれづれ
ウィーン近郊の古城ロースドルフ城にて、日本オーストリア友好150周年記念事業を進めています。今回の訪問では主に現地での活動の充実を目指しました。



プロジェクトをご紹介するにあたり、短いPVを作成しています。写真は城主夫人との対談中。壁のタペストリーは麻地に描かれた300年前の当時のまま。静かに歴史を語りかけてくるように感じます。

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陶片の間にて

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ウィーン近郊のロースドルフ城には、調度品として歴代城主が愛した陶磁器コレクションがあります。歴史的にもとても価値の高い品々ですが、第二次世界大戦末期、お城は旧ソビエト軍に接収され、それらは破壊の限りを尽くされてしまいました。戦後、城主のご意向で戦争遺産として城内にて一般公開されてきましたが(要予約)、その存在はこれまでほとんど知られていませんでした。
2015年、東京のオーストリア大使公邸にて催した茶会をきっかけに、私はこれらの陶片たちと出逢いました。「破壊」から「再生」へ。現在、日墺共同の国際的な平和プロジェクトとして進めています。(2020年10月よりホテルオークラ東京内の美術館・大倉集古館にて展覧会予定。詳しくはこちら





お城では城主様が丹精される見事なバラが満開でした!🌹✨

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愛犬ボードーは、私たちをいつもエスコートしてくれます。

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ウィーンでは、工芸の名門・国立ウィーン応用美術大学にて打合せ。学術研究の分野にて、日本とオーストリア両国の将来的な協力体制について話し合いました。コーディネイターとしても頑張っています💪✨


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なんと!
オーストリア国営放送ORFのインタビュー!
私たちの来訪を待ち構えていて下さったようで、いきなり本場でしたが(汗)英語でのインタビューは一発クリア!熱く語りましたよ〜


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日本での報道を受けて、現地での関心の高まりと手応えをしっかりと感じることができ、とても嬉しいです!



インタビュー中に見せて頂いたアウガルテンのリヒテンシュタイン家コレクション図録。眺めるだけでもため息…💗あまり知られていませんが、西洋磁器のルーツは、もとをたどれば日本の古伊万里に影響を受けたやきものなのです。

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プロジェクトメンバーとアウガルテン工房の見学もしました。お隣の敷地はウィーン少年合唱団の拠点で、歌声が漏れ聞こえる素晴らしい環境でした。

西洋磁器ではマイセンに次いで歴史の古い名門ブランド・アウガルテン。その前身であるハプスブルク家御用窯のウィーン磁器工房の貴重なアンティークは、ロースドルフ城の陶片群の中にも点在しています。


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先日訪ねた佐賀県有田市の窯業の現場を思い出し、歴史に裏打ちされた製造工程、海を越えた匠の技の素晴らしさに触れることができました。




ウィーンの中心、シュテファン大聖堂はハプスブルク王家の象徴。前後に駆け足で前を往復するばかりでごめんなさい。バロック様式の荘厳さに圧倒されます。

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滞在中は6月にして30度を超える暑さ!
なにかと理由をつけてはカフェタイムも楽しめました。🍰☕️✨
ここは1870年代創業の老舗カフェ・ツェントラル。

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ウィーンはカフェ天国✨
ティータイムでしたがウィンナーシュニッツェルをしっかり注文するの巻😆



展覧会の大成功と息の長い国際的なプロジェクトへの成熟を目指して、これからも真摯に取り組ませて頂きます。ご支援のほど何卒よろしくお願い致します!!




by hoshinamachiko | 2019-05-25 17:27 | 茶の湯つれづれ

鵬雲斎大宗匠

ご褒美のような日が来ました!🌸🌸🌸
茶道裏千家15代鵬雲斎大宗匠・千玄室様に、私の英語で茶の湯の活動を激励いただきました。


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ユネスコ親善大使でもあられる大宗匠は、茶道を通して平和の尊さを、国内外のさまざまな国際親善の場にて啓蒙し続けていらっしゃいます。御歳96才の大宗匠はバイタリティに溢れ、矍鑠とされ、この日頂戴したお言葉のひとつひとつが心に沁み入りました。


「茶碗を回していただく意味は、正面を遠慮する謙虚な気持ちの表現。人は前に出るからぶつかる。正面同士もぶつかる。自分を大切に一歩引くこと。そうやって人間関係は上手くいくのです。」


これは、この日大宗匠に教えていただき心に残ったお言葉です。


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安寧無事


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一期一会 一盌の茶味



茶の湯は言葉に頼らない究極のコミュニケーションです。五感の体験に国籍は問われません。お点前やしつらえの意味するところを英語で解説することで、どなたにも分かりやすく日本文化のこころと出逢っていただけます。



私の英語茶道のささやかな活動の源は、大宗匠が終戦以来、長年に渡り実践してこられた平和活動『一盌からピースフルネスを』への、心からの尊敬と賛同によるものです。


幼い頃から親しんできたお茶でしたが、子育てから少し手が離れた頃、改めて英語プレゼンという切り口で国際茶道文化協会の英語茶道教室に通い、一から学び直しました。


その後、森宗明先生のもと、明和会にて毎月英語プレゼンの御稽古をつけていただき今日に至ります。
その間に雑誌『なごみ』連載、そして初めての著書『英語DE茶の湯 こんなとき、どうする?!』(淡交社)を刊行する機会にも恵まれました。


まだまだ若輩ですので、精進をし、美しい日本文化のこころ、和敬清寂の世界を多くの方にお伝えできるように、少しでも世の中が平和になるように尽力していきたいです。

by hoshinamachiko | 2019-04-10 18:06 | 茶の湯つれづれ

おもてなし雑感

懐石料理の原点は茶の湯にあると言われています。いっぷくの濃茶を飲み回し、主客が一体感を創り出す。この一期一会のハイライトシーンにむけてお腹を整えるのが懐石料理の由来で、懐に温めた石を入れ空腹をしのいだのがその語源です。シンプルな一汁三菜が、徐々に形を変え、贅を凝らしたもてなしの数々となりました。


ここは都内屈指の予約の取れない和食の名店。半年も前から予約を入れて下さった先輩にお連れ頂きました。入店時の心地よい緊張感、去り際の充足感と名残惜しさに、お茶事(ちゃじ。懐石、濃茶、薄茶のフルコースの茶の湯のおもてなし)に通じるものを感じました。ご一緒させて頂いた外国籍のご夫妻も大いに満足のご様子でした。





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さて、ここからは老婆心…。

一流をうたうならば、サービスを提供する方も少しだけで良いのでお茶のお稽古をしてほしい。日頃からきものを着ることも心掛けて欲しい。先人が辿り着いたもてなしの完成形=茶の湯。この世界にちょっぴり触れるだけでも、より質の高い和のホスピタリティに繋がっていくのでは?すばらしいお料理の数々だっただけに、サービスで画竜点睛を欠くのは勿体ないです。



お客さんも、食べログのランキングや点数に目をくらませず、時には辛口のコメントで主客互いに緊張感のある切磋琢磨を。これまたお茶に通じるという意味で、茶の湯は日本のおもてなしの原点であり究極だなぁ。とひとり納得してしまいました。




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by hoshinamachiko | 2019-03-21 16:35 | 茶の湯つれづれ

新人アナウンサー研修

テレビ局の新人アナウンサーの皆さんに研修として茶道をご紹介させて頂きました。


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TBS新人アナ研修日誌より

お辞儀や立居振舞の作法、床の間やお点前の意味、おもてなしと和敬清寂など3時間みっちり(日本語で)。
さすが難関を突破し選ばれた新人アナの皆さん、初めてとは思えない飲み込みの早さで、真剣に取り組んで下さいました。

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入社以来研修が続いているそうですが、まもなく画面にて全国デビューとのこと。
茶室で体験したように、五感をフルにつかって取材をし、
画面で見る私たちの心にまで届くプロフェッショナルになってくださいね!(正座もがんばって!)


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TBS新人アナ研修日誌より



by hoshinamachiko | 2018-07-25 17:03 | 茶の湯つれづれ
大使公邸でのお茶会がご縁で出逢うこととなったウィーン北部の古城に眠る日本の伊万里焼コレクション。専門家のお力を得ることで、プロジェクトは大きく進展しはじめています。

2018年3月。調査、修復、そして展覧会を視野に、日本の陶磁器研究第一人者荒川正昭氏(学習院大学教授)をプロジェクトリーダーにお迎えして、はるばるウィーン北部のロースドルフ城を再訪しました。
国立歴史民俗博物館の日高薫教授も科研費研究の一環としてご同行くださるという、この上ないチーム編成で、古城滞在の四日間はとても有意義な時間でした。

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日本から専門家が古城入りし本格的な調査がスタート!
家族や友人も春休みを利用して プロジェクトチームのメンバーとして参加してくれました



調査の結果、陶片の約八割は東洋陶磁器、その約半数は日本の古伊万里であることが判明しました。
17世紀から18世紀のごく限られた期間に、主にヨーロッパ向けの輸出品として作られたこれらの焼物は、いずれも重要文化財クラス。国内に残されている事例が殆どないものばかりで、海を渡った陶磁器を長年にわたり調査されている荒川教授も、初めてご覧になるものも含まれていたのですから驚きです。
コレクションは、それらが陶片となってしまった戦争という悲しい史実にとどまらず、学術的な価値も非常に高いということが判明しました。(詳細は、雑誌「茶道の研究」5月号 荒川教授寄稿文をご参照下さい)



また、本件についてはNHKウィーン支局の取材班も合流し、映像とインタビューを収録。
近日中に何かしらの形で放映される見通しです。

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折しも来年、2019年には日本とオーストリア両国の外交樹立150周年を迎えます。
このタイミングに古城の陶片たちがベールの陰から表舞台に出ることに、本プロジェクトのオーガナイザーとして少なからぬ意義を感じています。
今後の計画は、更に現地での調査を進め、修復、そして日本での展覧会企画まで視野に入れて参りたいと考えています。

ローフドルフ城の陶片コレクションは、西洋に渡った伊万里焼が、ヨーロッパ各地の他の古城にも残されている可能性を示唆するものだそうです。
ロマンはますます広がってきました。
今後とも各方面の皆々様にご指導を仰ぎながら、プロジェクトを支えるお役目を務めて参りたいと考えています。


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ウィーン・ホテルザッハにて

by hoshinamachiko | 2018-06-01 08:00 | 茶の湯つれづれ

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
謹んで新春のお慶びを申し上げます。


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インターネットで繋がる世界が、私たちの仕事や生活に大きな変革をもたらし、その勢いは更に加速することが予想されます。スマホ画面など視覚に極端に偏った現代の生活にあって、茶室という異空間、そして茶の湯という総合芸術は、ひとが本来備えている五感、あるいは六感までもを研ぎ澄ませてくれます。茶を点て、服し、芸術に触れ、人と交わる茶の湯体験は、どんな時代にあっても私たちに感動と生きるエネルギーを与えてくれるのです。


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昨年は、南アジアの小国・スリランカにて多くの方と茶道を通して交流をし、日本文化への熱狂的なあこがれを感じ取ることができました。また、東京お台場の国立科学未来館にて主催されました世界科学館サミットでは、世界の頭脳である50カ国の科学者たちに、畳の上で茶の湯体験をご提供させて頂きました。科学と文化が互いに手を携える未来について語り合うことは、とてもワクワクすることでした。これらの経験を通して、私は、ジャポニズムへの世界的な関心の高さを、また、国内外問わずこのような感動体験が求められていることを強く感じました。今年も引き続き微力ながら、そのような機会をお届けすべく邁進いたします。

今年は二月の京都、十月のフランス・パリでの茶会に加え、『英語DE茶の湯』なごみ誌連載2016)の書籍化も予定しております。海外からのお客さまをお茶席でもてなす際に便利な、茶道英会話の実用書になります。実践の場面で少しでもお役に立てるような、茶の湯の楽しさと魅力の伝わる一冊にしたいと考えています。

また、ライフワークである国際親善の活動としましては、昨年に引き続き、オーストリア・ウィーン北部のロースドルフ城伊万里焼コレクション調査を、各方面のご協力を得て進めて参ります。中世から近代にかけて日本で製作された美しい陶磁器が、ヨーロッパの王侯貴族を魅了し、また、戦争という歴史の数奇な運命にのまれながらも、今日まで大切に継承された奇跡は、是非とも多くの日本の方々にお伝えしたいと考えています。




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茶の湯のもてなしを通して体感する悠久の時の流れと、過去から未来に向けて貫かれる普遍の価値との出会い。かつてのシルクロード、今のグローバルな世界で、文化を超えてそれらを共感する感動の場の創造。これらが私の目指す茶の湯です。そして、それをかみ砕くことで、何気ない日常のなかでも肩肘はらずに楽しむ、自分のための大切な一服ともなると考えております。

今年も一期一会に相応しい瞬間を、皆さまとご一緒できれば幸いです。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

平成30年元旦


保科宗眞



by hoshinamachiko | 2018-01-01 09:00 | 茶の湯つれづれ
陶片コレクションとの出逢い

粉々に砕かれた伊万里焼の陶片たち。このショッキングな写真は、ハプスブルク家の血族、ウィーン北部ロースドルフ城主である旧侯爵家に伝わる古陶磁コレクションの一部です。お城は第二次大戦時の侵攻により大きなダメージを受け、日本から輸出された古伊万里焼をはじめとする陶磁器コレクションはこのような無残な姿となってしまいました。

陶片は歴代の城主のご意向で今でも大切にされ、お城の美術館にて戦争遺産として一般公開されています。歴史の証人、平和のメッセンジャーとして強烈な存在感のあるコレクションですが、今のところ日本人も含め、その存在はほとんど知られていません。




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この夏、私は、数奇な運命を辿ったこれらの古陶磁コレクションを訪ねにオーストリアへ旅立ちました。




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私とこの古陶磁コレクションとのそもそものご縁は、2015年秋、在京オーストリア大使公邸にて当時の駐日大使のお姉様にあたる城主ピアッティご夫妻をウィーンからお迎えし、還暦の茶会をさせて頂いたことに遡ります。




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初来日のピアッティご夫妻
前オーストリア大使ご夫妻と
公邸のお庭で野点
この時初めてコレクションについてお話をうかがいました






陶片コレクションの物語


東京のオーストリア大使公邸にて私が亭主をさせていただいたお茶会の席にて、ピアッティ氏はこんなことをお話し下さいました。



ピアッティ家は、熱狂的な磁器蒐集で有名なドレスデンのアウグスト強王の臣下にゆかりのある貴族の家系で、


近代以降はウィーン北部の古城に移り住み、そこに日本の古伊万里をはじめ、東洋や西洋の貴重な陶磁器を蒐集し、城内を美しく飾る調度品として大切にしてきたこと、


それらが第二次大戦時の旧ソビエト軍による城の接収の折に破壊の限りを尽くされ、大きなダメージを受けてしまったこと、


壊されてもなお、今日まで大切に守り伝えてきたこと、


戦争遺産として城の美術館にて展示されているが、訪れる人は少なく、学術的な裏付けもないまま今日に至っていること。。。




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城主夫人と美しい古城の間にて




後日写真も送って頂き、その無残な姿に私は言葉にならない哀しみを覚えました。同時に、長く大切に保管されてこられた先代や当代のご城主に敬意を表し、日本人である私に何かできることがあるのではないかという強い衝動に駆られたのです。




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壊された陶片の筋状の展示が
美と破壊、戦争と平和のメッセージを放つ






ロースドルフ城を訪ねて

古城はウィーンの北60キロに位置し、車で一時間程度で到着しました。
道すがら目に飛び込む田園風景は本当に美しくのどかで、とても楽しいドライブでした。



城主のピアッティ様は、ハプスブルク家に血縁を持つ中世以来の領主です。現在はその広大な敷地でオーガニックBIO栽培の農作物を生産され、お城とそこに伝わる宝物の数々を大切に管理されていらっしゃいます。




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古くは11世紀に建造の古城

最近の大改修は1800年代




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エメラルドブルーを基調とした美しい寝室



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広間の眼下には広大なお庭 その先には穏やかな田園風景






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お城の中の教会は今も地域の中心的存在



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泊まらせて頂いたお部屋
天井が高くピアノの音色が響きます



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中庭の噴水は なんとプールに!



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伯爵はオーストリアのオーガニック農園の先駆者

一面のフェンネル畑!いい香り!




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たわわに実ったオーガニックの洋梨



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隣りのビレッジはBIOワインが有名
三角屋根のワインセラーは千年の歴史







陶片の間



今でこそ、のどかな田園風景ですが、中欧一帯は度重なる侵略の歴史でもありました。

そして、ヨーロッパの王侯貴族にとても人気のあった伊万里焼のコレクションでしたが、ロースドルフ城では第二次大戦末期に旧ソビエト軍の侵攻にあい、壊滅的に破壊されるという悲劇に見舞われました。




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戦後70年以上にわたり、その無残な姿にも関わらず、

城主一家はそれらを戦争遺産として大切に継承し、美術館として一般にも公開しています(夏季限定。要予約)

それらは床にストライプ状のユニークなインスタレーションで展示されています。






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展示室の壁はあえて侵攻の傷跡を残す
壁にはロシア語の看板



戦争と平和、美の創造と破壊。
すべてを超越し融和へ向かう決意。
ウィーン北部の要塞を兼ねる小さな古城にて、数奇な運命を辿った日本の磁器たちは、私を惹きつけて止みません。



このままにしておいていいのかしら...。

静かな古城の人知れぬ展示には、私を突き動かす強い何かを感じずにはいられませんでした。




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お礼の茶会


滞在の御礼にいっぷく点てさせて頂きました。



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今回の旅に同行してくれたのは、学生時代からの旧友で書家の皆川彩雨さん。
ベルリン芸術大学で教鞭をとる彼女が、古城でのお茶会のために和敬清寂を認めてくれました。


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古伊万里再生プロジェクトの設立


陶片の存在を知って以来、遠くヨーロッパの王侯貴族に愛された日本のやきもののロマンと、戦争のもたらす悲惨さを、平和な日本に暮らす、戦争を知らない私のような世代と共有したいと強く思うようになりました。

そして、可能な限りアクションを取り、自分に何かできることはないかと模索し続けました。



これまで日本文化とはさほど馴染みのなかった城主夫妻には、やきものの完璧な姿をよしとする西洋文化に対して、日本には「わび(=不完全の美)」という感性があることをお伝えしました。



破片のように壊れてしまったものに対して慈しみと物語を紡ぐ感性であり、また、継ぐことは新たな感動を生む。多くの方の共感を得る可能性が高いこともお伝えし、ご賛同を頂くことができ、両国にて展覧会を目指すプロジェクトを発足させました。




そして、大変嬉しいことに、私と同じ熱量で感じ入って下さる専門家の方々と繋がり、2018年春には日本から初めての学術的な調査のため研究者チームの派遣が決まり、東京での展覧会も決定いたしました。


詳しくは、日墺共同の古伊万里再生プロジェクト公式ホームページをぜひご覧下さい。



世界は再び混沌としてきました。

歴史が語る戦争の悲惨さを、陶片の間にて示し続けてきた城主夫妻の素晴らしい感性と先見の明に敬意と感謝すると共に、

このプロジェクトを通して、文化・芸術の素晴らしいさ、過去の歴史と平和について、戦争を知らない若い世代とともに国境を超えて考えるきっかけにしたいと考えています。


ご支援のほど何卒よろしくお願い致します。



お問合せ、詳細はこちらまで!

日本オーストリア友好150周年記念事業

古伊万里再生プロジェクト



公式ホームページ



公式ふ



公式ツイッター






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ロースドルフ城のHPはこちら



The antique Imari collection from the medieval, treasured at the Loosdorf Castle, Austria. What makes it remarkable is the immense amount of shards. The beautiful antique porcelains were badly destroyed during the WW2 when the Russians invaded the castle. The broken porcelain collection is a message of peace. We are the international volunteer project team sharing the story of Loosdorf’s broken porcelains world-wide by academic researches, cultural events and exhibitions at Tokyo (Oct. 2020 to Jan 2021 at the Okura Museum) .

http://www.roip.jp



by hoshinamachiko | 2017-08-13 15:45 | 茶の湯つれづれ

抹茶のロマネ・コンティ

抹茶は、最高級の緑茶の粉末ですが、

茶葉が畑でどのように育てられ
どんな知恵と工夫があり
同じ緑茶でも、煎茶や玉露とどこが違うのか。
茶道を嗜む人でも
実際に碾茶(てんちゃ。抹茶のための茶葉)の畑を訪ねたり、手摘みを体験することは
残念ながらほとんどないのが実状です。


かく言う私もその一人でして
抹茶の生産者さんとの接点は持てないものかと
素朴な疑問を抱きつつ
なかなか機会に恵まれずにおりました。


海外の方に、
英語で日本の茶道をお伝えする活動をしておりますと、
世界中でその人気を高めているmatchaについて
必然的に、製法やこうのうを質問されることが度々あります。
そんな時は、本などから得た知識をお伝えするに留まり、
実感がこもらず、正直なところ、もどかしさを感じておりました。



そして!
ついに!!
抹茶の生産者さんを訪ねる機会に恵まれたのです✨✨

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行き先は、京都茶舗『孫右エ門』さん。

昨秋、東京・青山DORMEUILサロンでの茶会

今年二月の大徳寺瑞峯院様での濃茶席など、

本物志向の方々、若い世代に向けた、

茶の湯のご提案をコラボするなど、

志同じくさせて頂き、大変お世話になっております。


「今年のお抹茶の出来栄えを、ぜひ見に来てください!」


と、嬉しいお声をかけて頂き、

思い切って新幹線に飛び乗り、京都へ。

宇治茶の畑を訪ねに行って参りました。




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江戸時代より続く茶園のオーナー太田さんご夫妻
とっても仲良しで素敵なカップルです✨






◯覆いをかけた茶畑

抹茶は、緑茶の茶葉を石臼で挽いたもの…とだけでは表しきれないほど
手塩にかけられた工程で成育されます。

抹茶にするために育てられる茶葉は、
碾茶(てん茶)と呼ばれ、
春に覆いをかけて
日光を極端に遮ることで
新芽は柔らかくなり、味と香りが凝縮した
最高級の茶葉となります。

ペットボトル詰めの緑茶をはじめ、
ちゃばの多くは年に二度、三度と収穫されるところ、
てん茶は、茶の木の樹齢と品質を守るため
その収穫を年に一度だけに留められています。
ここで、まず、抹茶の希少さが理解できます。



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江戸時代より代々続く京都の茶舗「孫右エ門」さん。
昔ながらの製法にこだわる抹茶を生産しておられます。



覆いをかけることで、
根で生成されたうま味成分のテアニンが、
そのまま葉のすみずみまで行き届きます。


日光をさんさんと浴びせる煎茶の場合、
テアニンは渋み成分のカテキンに化学変化をしますので、
この点で、お味に大きな違いが生まれます。


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日光を遮断された碾茶は生育もゆっくり。
そのため生産量が非常に限られるので
ここでもまた、抹茶は希少な食品と言えます。
茶葉は、まるで赤ちゃんの肌のように柔らかくてツヤツヤ✨


同じく茶葉に覆いをかける玉露も
覆う期間が短く、また、手もみの工程の有無といった
生産工程に、碾茶との違いがあります。


ただし「緑茶」というくくりでは、
煎茶も抹茶のための碾茶も同じ品種の木であり、
もっと言えば、紅茶やウーロン茶とも同種です。
紅茶は発酵茶、ウーロン茶は半発酵茶ですが、
緑茶は発酵をさせないように、収穫後ただちに茶葉を蒸すところに違いがあります。





茶の木は樹齢数十年、
なかには数百年というものもあるそうで、
お茶農家さんでは古くから

「植えた当初50年は煎茶で、
次の50年で碾茶(抹茶にする)で採りなさい」

と言われているそうです。
抹茶に使う茶葉は樹齢の高い木が適するということですね。
益々ありがたみが増してきます。


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覆いの下はひんやり涼しくて、マイナスイオンたっぷり。
高濃度酸素と葉緑素のヒーリング効果で心身が癒されます✨




お茶の木に覆いをかけて
茶葉にうま味成分を残すという工程は、
400年前には実用されていたそうです、
より美味しく、より色鮮やかな抹茶を求めた
こだわりの強い当時の茶人たちと、
彼らの高い注文に応える形で
生産者が試行錯誤した様子が蘇ります。



こちらの農園では、
今では珍しくなってしまった昔ながらの手摘みで、
一枚ずつ、丁寧に茶葉を収穫します。
効率化と人手不足で機械化が進んでいるそうですが、
やはり一枚ずつ手積みする方が、茶葉が傷つかず、味も損なわれないそうです。

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ベテランの手仕事!

瞬時に新芽を見分けてテキパキ手早い!!

お茶の葉にはアクがなく、天然の油分で摘む手もしっとり潤います






◯茶葉の加工


収穫された茶の葉(てん茶)は、
その日のうちに蒸しと乾燥の工程を経て
水分を5%にまでカットさせた
パリパリ状態の(あら茶)にします。
煎茶や玉露のような手もみ乾燥はしません。


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工場内は蒸らしと乾燥の工程で室温が50度にも上がります。
お茶の香りが充満していて幸せ♪




出来上がったパリパリ状態の茶葉は
驚いたことに、このままでも美味しくいただけちゃう!
旨みたっぷり!!
かつお節みたい!!


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このパリパリ状の茶葉(あら碾)に、
お茶選りという、更に気の遠くなるような作業が施されます。
軸や茎を選り分けて、
実際に抹茶として頂く葉の中心部のみにします。


茶葉は湿気を嫌うため、
部屋は除湿機がフル稼働。
お子さんが幼稚園や学校にいる間の時間で
主婦の皆さんが作業をなさっていらっしゃいました。

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こうして仕立てられた茶葉は、
夏の間、じっくりと寝かせて熟成させます。
茶道では11月に入ると、茶壺の封を切り、石臼で挽き、
その年の新しい抹茶として頂く儀式をいたします。
これが、茶人のお正月と言われる「口切りの茶事(ちゃじ)」です。


抹茶は、茶道において、
自然の恵みと関わる方々への感謝のシンボルなのです。



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◯農園さんならではのご馳走



今回の訪問では、
農家さんだからこそ味わえる
ご馳走もいただきました。



収穫直後の茶葉を蒸らして乾燥させた(あらテン)。
このままパリパリと頂いちゃいます。
うま味たっぷりで後引きの美味しさ✨


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旨みたっぷり!お酒のあてにもオススメ。





てん茶をそのまま煎じると、まるでお出汁のようなうま味!
ご飯にかけて…これぞ本物のお茶漬け。
ほかには何もいりません!

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本当に美味しいお抹茶は、石臼で一時間じっくり挽いて、たった20g...。
気が遠くなる作業ですが、急いで挽くと苦い抹茶になってしまいます。

余談ですが、売れない芸者さんのことを
裏で抹茶を挽く時間があることから
昔は「お茶ひき」さん、なんて呼んだりしたそうですね😆

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◯将軍献上品クオリティ


このようにして大切に大切に育てる秘伝の抹茶は、ほんず製法といい、
金粉1グラムと抹茶1グラムが同じ価値で取引される程、高価なものでした。

「金粉=抹茶」

えっ?とお思いになるかもしれませんが、
将軍に献上されたほんず抹茶は、
それ程の高い価値あるものでした。



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蛍光黄緑色こそ、ほんず抹茶の証


そして…
そのお味を現代にも受け継ぐ茶園さんが
あるのですから感激なのです。
全国でも数件のみにまで減少したそうですが、
利休の時代からの、本物の抹茶のお味を再現するため
製法を伝承し、日々がんばっておられます。



私が初めて孫右エ門さんのほんず抹茶を頂いた時、
「これが江戸時代のお味…‼︎」と大変に感動しました。
最近では、市販の抹茶は全般的に甘みを好む傾向にありますが、
まったりとしたうま味、喉越し、鼻に抜ける芳醇な香りは
これまでに体験したことのない素晴らしいお味です。



なによりも、
味覚でタイムスリップできる訳ですから、
いまでも鮮明に思い出せるほどのインパクトでした。
将軍献上品と同じ製法で、当時のクオリティを再現。
現代にあって、このお味を体感できるって、
本当にありがたいことです。






◯『本物』ってなんだろう


時代を超越する五感体験こそ『本物』であり、
茶道の醍醐味だと私は考えます。
その体験が心を潤し、人を幸せにする。
時を経ても、鮮明に思い出せる一期一会。
人を感動させるものが、本物だと思います。




お茶会で、目の前にする古いお道具と昔ながらのお点前で
いっぷくの献上品のお抹茶を頂いたなら...。

人、自然、宇宙、すべてとの繋がり、
「いま」「ここ」に至っていることへの感謝、
言葉や国境を越える普遍的な価値を味わって頂けるでしょう。

二月の大徳寺でのお茶会をご体験された方々が
今でも思い出しては感動新たになさるのも、
『本物』を五感で体験されたからに他なりません。



本物は裏切らない。



どこかで聞いたことのあるフレーズですが、
正にその通りだと思うのです。


五感体験を、今どきの用語で表現すると
「マインドフルネス」になります。
私は、最高にクオリティの高いマインドフルネスを
茶道を通して味わって頂きたいと考えています。


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大徳寺瑞峯院にて茶会
濃茶をほんず抹茶で練りました。






◯茶道と抹茶のこれから


抹茶はお点前にはなくてはならないもの。

茶室にあって、お客様とのコミュニケーションを円滑にする要であり、

茶碗の中のお茶には、自然の恵みと生産に関わる方々の思いが詰まっています。




茶会の中心にある『お茶』。




茶道が伝統文化として継承され続ける中で、
抹茶そのものについても
もっと光を当てていくことで、
更にその魅力が広がるのではないかと思います。


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◯残したい本物の「抹茶」




本物は美味しい。

本物はカラダに優しい。



抹茶は、茶葉そのものを摂取する食品です。
抗がん作用、抗酸化作用、血圧コントロール、美容や免疫力アップなど
様々な効能がある栄養価に富んだスーパーフード。
カフェインが穏やかに作用するため
リラックス効果や仕事の能率もあげてくれるでしょう。


お点前にこだわらず、
日頃から茶筅を振って抹茶をいただく習慣が
もっと広がればいいのにな、と思っています。
もちろん、お茶碗を手にする時間は、ひとときのマインドフルネスを意識して。
自然の恵み、関わる方々すべてへの感謝の気持ちと共に味わいます。






また、今回の茶園訪問で、とても印象的だったのは、
地域の皆さんが総出で、作業をされている様子です。
覆いの下のあちらこちらから
楽しそうなお喋りや笑い声が聞こえてきました。

年に一度の収穫期。
数百年間、変わらない初夏の風物詩なのでしょう。
残したい原風景だと思いました。

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お茶摘みを楽しみにされている地域の皆さん
楽しそうなお喋りと笑い声が絶えません。



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この道ひとすじ
太田さんのお母さまと。



茶畑でも機械化と効率化が進み、
いつか手積みがなくなってしまうのでは...と、
オーナーの太田さんは危機感を抱いておられました。
手積みは、やっぱりお味が違う。
残念ながら、このような伝統的な製法を守っている生産者さんは
全国でも(世界中で)ごくわずかだそうです。






◯抹茶のロマネ・コンティ『しろたえ』


品質と樹齢を守るため、収穫を年に一度にとどめ、

地域の方々も総出で一枚ずつ手摘みにこだわる。

熟練の生産工程、その成果物としての最高品質。

妥協せず、究極までこだわった抹茶は、

まさに【抹茶のロマネ・コンティ】と言えましょう。




同行した私の母は、太田さんのお話を聞きながら、

ありがたい、ありがたいと

何度となく涙ぐんでいました。

本物は、人を感動させるのです。



手塩にかけて育てられた茶葉は、

自然の恵みと、関わる方々の情熱と愛情の賜物だということが

私もよくよく分かりました。

本物とは何か。その答えを見せて頂いたように思います。



この度、京都茶舗孫右エ門製ほんず抹茶のお茶銘を

当家の家紋にゆかりある『白栲(しろたえ)』と命名させて頂きました。



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ほんず抹茶『しろたえ』が

これからの時代、本物にこだわる人たちによってますます注目され、

愛飲されるように、私も微力ながら応援し続けたいと思います。




また来年の収穫が楽しみでなりません。

太田さん、茶園の皆様、ありがとうございました!!




by hoshinamachiko | 2017-06-06 13:31 | 茶の湯つれづれ

伊勢神宮献茶式

伊勢神宮への参拝ならびに
茶道裏千家今日庵による献茶式へ参列いたしました。
当日はあいにくの小雨でしたが、
新緑はさらに色鮮やかで美しく、
神宮の懐の深さに心洗われました。


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私の大叔父である鷹司大宮司(平成29年6月退任)の話によりますと、伊勢神宮には式年遷宮を代表とする「常若(とこわか)」の精神があるそうです。



形あるものは必ず滅びる。
でも、次の世代に伝承し続けることで、
常に生き生きと永続を体現することができる。



伊勢神宮では、年間千数百回に及ぶ神様へのご奉仕が、
戦争の時も震災の時も、
1500年間に渡り一日も欠かされることなく
今日まで続いていています。



想像するだけでも圧倒されますが、
流れる空気はとても優しく穏やか…。
心清らかになる感覚は
参拝者のどなたも経験されることでしょう。



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神代、今にあり。


世界にも類を見ない、古くて新しい永遠の「かたち」。
日本の地理的、民俗的な特徴も多分にあるけれど、
自然と人間が共存共栄する、世界に誇れるサステイナブルなシステムがここに凝縮されています。



自然の恵みと共に生かされていることに、
ただひたすらに感謝をする祈り。
儀式を通して丁寧に表現される真心と
技の粋が結集する宝物の数々。
日本人が連綿と大切にしてきた「和敬清寂」の精神も、
全てここにありました。



記憶に新しいG7サミットでも
各国首脳が揃って参拝されたことは
歴史に残る象徴的な出来事でした。
戦前の国家神道への回帰など
全く的を得ない議論だと私は思っています。
母なる自然への敬虔な信仰心に国境はない。
人間として最も崇高でピュアな祈りであると思うのです。




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前日の外宮参拝に続き、
献茶式当日には、まずは内宮を参拝。
お伊勢さまには、あれこれ細々
お願いごとをしてはいけませんね。
お祈りは感謝のみ。
またここにこうして戻って来られたことは
文字どおり、有難いことです。




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献茶式では、雅楽と舞のお神楽、
そして裏千家坐忘斎お家元のお点前により、
濃茶と薄茶の御茶一服が神様に奉納されました。


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お点前には人柄がにじみ出るものと教わりましたが、
正にそのようにお見受けし大変感銘を受けました。







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献茶式の後は、
神宮茶室の今日庵席にて心洗われる茶の湯のひととき。
美味しいお抹茶と和菓子、
お心入れのお道具の数々、
耳を澄ませばサラサラ流れる五十鈴川の流れ…。
神様に最も近い場所でいただくいっぷくの贅沢なこと!!




神宮茶室は、
松下幸之助発案で10億円をかけて寄進されたお茶室。
今日庵席は、例年、こちらの広間にてお釜を掛けられます。
また、春と秋には特別公開もされる貴人茶室は、
貴人口もご立派な、最も威儀の正しい茶室と言えましょう。
これまでにたった一度だけ、
常陸宮両殿下をお招きしてご使用になったのみだそうです。



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さて、東京の日常に戻り、
夢を見ていたのかしらと思うほどのギャップ…。
いえいえ、全ては繋がっているもの。
繋げなければならないもの。
都会の真ん中での茶の湯にも、必ず意義があるはず。
自然、命、感謝。
日々の中で、もっと意識的にフォーカスしてみたいです。




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Attended the Ise Jingu shrine tea ceremony conducted by the Urasenke Grand Tea Master Zabou-sai. At the ceremony, a bowl of matcha was served to Kami - God of Sun, through the traditional ceremonial manner, followed by gagaku Japanese classic court music and dances.

With a deep spiritual atmosphere, Ise Jingu has been the pride and the symbolic faith of Japanese people for over two-thousand years. It is the center of Shinto, Japanese indigenous faith, maintained in its original form thanks to a unique retail of renewal.

While walking through the thousand-years old wood and the prayer for Kami, who is placed in a brand new shrine every twenty years for the last fifteen hundred years(!!), it is so natural to feel the gratitude towards the gift of nature and the linkage between the past and the future. There exists a very old but yet very new sustainable system of living with Mother Nature. https://www.isejingu.or.jp/en/

The same spirit underlies in the Chanoyu, Japanese tea ceremony - Harmony, Respect, Purity and Tranquility. These are what we are trying to express and share symbolically through a bowl of matcha.

by hoshinamachiko | 2017-05-16 10:08 | 茶の湯つれづれ